短編集は寝る前に一編という読み方ができ、寝不足にならずに済むところが好きだ。と思っていたら、ショーショートと掌編がミックスされている。まずそのトリックに引っかかる。
「ラジオの似合う夜」と「刀之津診療所の怪」はシリーズがらみ。毎回感じることだが、森博嗣は作中のトリックに力をそそがない作家だ。森ワールドに触れたことのある人間に対しては、事件の外にある謎を提示し90%の解決で後味を残す。読者が読み返す、読み続ける動機を生み出すシステムを考えたのだろう。見事に罠に嵌っているわけだが。
SSの「証明可能な煙突掃除人」が良い。10ページにも満たない作品だが、物理的な謎と解決、そして謎だとさえ気付かないものの不条理な解決、そして物語はじめへの回帰。こういう文章にはなかなか出会えない。地球儀のスライス/有限要素魔法に近い感覚。