つまづきの多い人生であるが、私にも忘れがたい転倒の記憶がある。
私のスキーデビューは表万座スキー場で、その後もアクセスのしやすさや会社の保養施設がありロハで泊まれたことなどの理由で、長くホームゲレンデにしていた思い出の場所だ。万座温泉スキー場などに比べると、距離が短く、またテクニカルなコースがないためかファミリーや初心者が集まるゲレンデでもあった。
メインコースのてっぺんまで行き、降り口そばのコース端で仲間が揃うのを待っていた時のこと。上から下までピンクで決めたかわいい女性――スキー場ではウェアでバクチ的に判断するのが通例――がリフトからよろよろと降りてきた。かと思ったらコースの方へは曲がらずに、私達の立つ方向へ突っ込んできたのだ。易しいめのゲレンデとはいえコースの外は伐採していないし傾斜もきつい。私の後はほとんど崖といってもよい場所だった。滑降禁止区域の境にはロープが張ってあるのだが、単なる目印でしかなく防壁の役にはたたない。
とっさに、私は彼女を抱きとめようとした――その頃、スキーをつけたまま自分の思い通りの方向へ歩くことができるくらいに上達していた私には、よけるより上半身だけの動作しか思い通りにならなかったのが実情なのだが――別の欲求が働いていた可能性も否定できない。ところが、彼女は、腕を広げて(待って)いた私の1メートルほど手前でコケると、そのまま容赦なくスライディングタックルをあびせかけやがりました。前傾で構えていた私を巻き込み崖下へ、抱き合うように転げ落ちてゆくふたりいぃぃー。この光景を見ていた梶原一騎が、のちに「愛と誠」を書いたとゆう話はまったくありません。
ま、二人とも怪我は無かったんですけど、新雪で身動きとれなくなっていたのをスタッフの人に助けられ(掘り出され)、スノーモービルに乗せられて(彼女は自力で降りられないほど怖がっていた)事務所で調書みたいなのを取られました。なぜ、ワシまでついて行ったのかは思い出せないのだが、もっとも腑に落ちないのは、どうしてこれで恋に発展しないのか。
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